一筆入魂

フリーライター/編集者 山下久猛のブログ

2010
06/08
仕事人インタビュー

【サトシンさんインタビュー ・その7] おてて絵本の効能

最近またまた本業が忙しくなってうれしい悲鳴をあげているヤマシタですこんにちは。サトシンさんに新たな動きが生じてきたようなので仕事の間隙を縫って慌てて続編をアップします。

その6から続く

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想像力と創造力が鍛えられる
──では、前にもさくっと語っていただいているんですが、改めて「おてて絵本」のよさや付加価値について詳しく教えてください。

サトシン 「おてて絵本」って、ルールといえば親子で手を開いてもらうことだけ。あとはそれを絵本に見立てて自由にお話を作っていく。手を開いて、何が見える?と子供に聞くと、お化けが見えるとかロボットが見えるとか勝手に言い出すわけ。へーすごいね、ロボットは何してんの? って聞くと、遊んでるとかいうんですね。じゃあ、それからどうなるのか話をしてみてくださいと言うと、昔昔どこそこにロボットがいまして、遊んでたら怪獣がやってきました、みたいな話をしだすわけ。どんな怪獣? おもしろいね、次どうなるんだろう? といったように合いの手を入れると、子供は大人が面白がって聞いてると思ってどんどん話をしだすんです。

子供はほんとに手を使った絵本の「ごっこ遊び」として楽しんでるんですよね。その中で言葉を獲得するといったお勉強的なメリットもあり、そういう遊びの中で空想する「想像力」とクリエイティブ、物を作る「創造力」のふたつの「そうぞうりょく」を養っていけるんだろうなあということも思ったり。

──その「そうぞうりょく」は人として生きていく上ですごく重要ですもんね。

サトシン だよね。あと、今の子供を見てると、ウチの子なんかもそうなんだけど、圧倒的にコミュニケーションの機会って少ないんですよね。子供どうしで遊ぶにしても、携帯ゲームや携帯電話をいじりながらひとりで遊んでる。友達いるのにですよ。テレビも一方通行のコミュニケーションですよね。誰かとやりとりをする楽しみを感じられる機会ってどんどんなくなってますよね。

──確かに。

サトシン でも「おてて絵本」という最低限のユニットの中で、大人は子供にお話を聞くと、子供は大人を喜ばせたいからお話を作る。それを大人がちゃんと聞いてあげることによって、人に対してお話をするとか人とコミュニケーションできることの楽しさみたいなことを小さい頃から感じられる。それっていいことなんだろうなって思ったりするんですよね。

──それは絶対にいいことですよ。

サトシン あと子供を取り巻く大人ってどんどん減ってますよね。僕の子供時代は、買い物に行ったとき、口の利き方がなってなかったりすると怒ってくれる店のおばちゃんがいたりとか、挨拶しないと怒る近所で有名なガンコ親父がいたりとか、野球やってたら俺にもやらせろとか全然知らないランニング姿のオヤジが入ってきたりとか、いけないけどタバコの吸い方を教えてくれたり、エロ本を見せてくれたりする中学や高校のあんちゃんがいたりしたんですよね。

──あー僕の子供時代もそうでした。全然知らないあんちゃんやおっちゃんとよく遊んでましたね。

サトシン そうでしょ? そういった同級生以外の年上の人との付き合いの中で、いろんな世代の人とのコミュニケーションの方法とか、学校では教えてくれないことを学ぶ機会もあったと思うんですが、そういう機会すらも今の子供にはない。身近な大人といえば、自分の親と先生しかいなかったりするんですよね。じゃあどこでコミュニケーションの楽しさを学ぶの?っていっても、ほんとに限りなくゼロに近い。そんな中、せめて親など近いところの大人が子供にコミュニケーションの楽しさを教えてあげる一番初歩的なツールとして「おてて絵本」って悪くないんじゃないかなと。

大人にとってもメリットがある
サトシン あと、子供にとっていいだけじゃなくて、子供から話を聞く過程で、大人が変わるってのも大きいんですよ。話をする中で純粋に子供の表現っておもしろいじゃんって気づいたり、子供そのものがおもしろいなって気づいたりすることもある。特にちっちゃい子ってお話を聞く過程で「こいつ、今、ここで変わった」みたいな成長した瞬間が見えたりするんですよ。そういう、子供と対する中で大人も変わってくることってあるんじゃないかなっていうことがひとつ。

あと、子供と接するときに大抵、あれしちゃダメ、これしちゃダメ、早く宿題やりなさいとか一方的に親が指示・命令するじゃないですか。でも「おてて絵本」って子供がまず話をするところから始まるんですよね。そうすると、傾聴っていうんだよね、まず聞くことから考えるってことができるようになる。子供から生まれてくるものに耳を傾けることで、子供の想像力・創造力の可能性を伸ばしてあげたり、まさにコミュニケーションとしての大事なものが得られるというメリットもあるわけです。そんなことから、子供に対する心の準備というか、子育てにゆとりもできてくるんですよ。そういったことも含めて大人が変わるためにもいいツールだと思うんですよね。

──なるほど〜。

サトシン あとね、お話を作り出すことに関して言えば、もちろん詩とか作文とかもありますが、子供に書かせる時点でハードルがドーンと高くなるんですよ。テーマを決めて書かせるっていう時点で思考が一回止まるし、子供って先生や親によく思われるために書くみたいなところもあるじゃないですか。そうすると、本来の自分の中にあるものとは違うもの、ちょっとかしこまっちゃったり、カッコつけちゃったり、おもしろくないものが出てきちゃったりするじゃないですか。

でも「おてて絵本」って遊びだから、自由奔放にアドリブの世界でしゃべってるので、スットコドッコイな話がどんどん出てくる。もちろん、大人が補助的に声をかけながらお話を引き出してはいるんだけど、とにかくすごく面白い。子供発の新しい表現ジャンルにもなるんじゃないかと思います。こんな感じで「おてて絵本」にはいろんな付加価値があるみたいなんですよね。単純な遊びなのに、いいことがいっぱいくっついてきて、逆に悪いことは何もない。だからいろんな人に知ってもらうことっていいことなんだろうなって思っているんです。

──サトシンさん自身も楽しそうにやってますよね。

サトシン さすがヤマちゃん。いいとこ突くね。僕個人としては、子供発の表現ジャンルとして、いろんな人におもしろいでしょって見せること自体が、クリエイティブな活動でもある。それは、コミュニケーションというものを世の中の人々に知ってもらうということのおもしろさなんですよね。僕が関与することによって「おてて絵本」が世の中に広がっていけばいくほど、反響も多く寄せられます。そういったレスポンスで社会との結びつきをひしひしと感じられることも非常におもしろいんですよね。

──サトシンさんのお子さん(「おてて絵本」の発明者である長女)が「おてて絵本」で遊んでた期間ってどのくらいなんですか?

サトシン 2歳ちょい前から小学校2、3年生くらいまでですかね。

──じゃあ結構長い間やってたんですね。

サトシン でも遊ぶ頻度はどんどん減っていきましたけどね。始めた当初は「おてて絵本」ばっかりな時期もあったんだけど、成長していくに従って普通に本やマンガも読むようになり、徐々にやらなくなりました。でも機能的にはそれでいいんだろうなあと思ってたんですよね。

──前にも聞きましたが、サトシンさんの3人のお子さんのうち、娘さんの下の二人の男のお子さん(長男・次男)はやらなかったんですよね?

サトシン ふたりとも長女みたいに本が好きじゃなくて、表現することもそんなに興味なかったしね。特に長男はほとんどやらなかったなあ。でも次男はまだ小学校でストライクゾーンなときに僕がこういう活動をし始めたので、引きずられるようにお話を作ったりしてましたよ。

──子供といえどそれぞれ嗜好の違いってありますからね。

サトシン でもね、今思うと下の子供たちにもやらせるべきでしたよね。今、いろんな子供に「おてて絵本」をやらせてみて思うのは、みんなレベルの差こそあれ、やっぱり大人に話をしたい、話を聞いてもらいたいんですよね。

保護者向けの本も
──「おてて絵本」関連の本ではどんなのがあるんですか?

サトシン
 2008年11月に小学館からお父さんお母さん向けの「おてて絵本」の入門本である『おてて絵本 入門』を、2009年7月には扶桑社から子供たちのお話作品集『きいてね!おてて絵本』を出しました。

──あ『おてて絵本 入門』の方は、買って友達夫婦にプレゼントしました。「おてて絵本」のやり方がわかりやすく解説されてあったので好評でした。当然お母さんの方は「おてて絵本」を知ってましたよ。

サトシン お買い上げ、ありがとうございます(笑)。これらをきっかけに、もっといろんな人に知っていただくためのPRを展開中です。テレビ、新聞、雑誌に取材していただいたり、ネットの配信の記事に出していただいたり、ラジオ番組に出たり。

──媒体問わず、けっこう露出度高いですよね?。じゃあ次に「ソング絵本」についてお話をおうかがいしたいのですが。今年の2月、この連載の続きの前に、「番外編緊急インタビュー」としてすでに「ソング絵本」については語っていただいているのですが、ここで最初から詳しく語ってください。

サトシン はい。「絵もなければ文章もないけど、これも絵本だよ」っていうのが「おてて絵本」でしょ。それと基本的には同じベクトルなんだけど、対極的なこともできるのかなあと漠然と思ったことがあってね。

──つまりその対極的なことってのが「歌」だと?

サトシン 慌てない慌てない。あのね、そもそもの部分から話すとね...

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次回からは「ソング絵本」誕生秘話についてたっぷり語っていただきます。乞う、ご期待。



●バックナンバー
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回

[番外編]
緊急うんこ!インタビュー [前編]
緊急うんこ!インタビュー [後編]
「ソング絵本」に関する緊急インタビュー

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 ●サトシンさんプロフィール
サトシン(本名:佐藤伸)1962年新潟県出身。三児の父親。元コピーライター。
広告としての受賞歴:「日本新聞協会 新聞社企画部門 新聞広告賞(新潟日報社)」「新潟広告賞グランプリ(第四銀行)」「新潟広告賞大賞(北陸国道協議会)」ほか。
2006年12月、すずき出版より「おったまげたと ごさくどん」(サトシン/作 たごもりのりこ/絵)を出版し、以降、本格的に作家活動に突入。
2007年4月、「おてて絵本普及協会」設立。新しい親子遊び「おてて絵本」の普及とこどもたちの「おてて絵本」ストーリーの採取・紹介に力を入れている。
2009年12月に出版した「うんこ!」がただいま絶好調増刷中。


●公式サイト→絵本作家サトシンのHP
●サトシンさんが立ち上げたおてて絵本普及協会



●絶賛増刷中の






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