一筆入魂

フリーライター/編集者 山下久猛のブログ

2010
02/01
仕事人インタビュー

サトシンさんインタビュー その5 「おてて絵本で世界制覇」

現在上京中で明日一緒に飲んだくれる予定のサトシンさんのインタビュー、その5をお届けします。

その4から続く)

ウチの娘だからできたのか・・・?

サトシン 「おてて絵本」を広めようと思ったとき、ちょっとした懸念もありました。ウチの長女は、本好きで、お話をすることも好きで、表現力もある、ちょっと勘所のいい、しかも活発な子供だったから「おてて絵本」のような遊びができたのかもしれないなと。恥ずかしがりだったり、表現が得意じゃなかったりする子供も世の中にはたくさんいる。そう考えると、誰もができるものではないのかも。だとすると、この遊びはそんなに広がるものでもないのかなあ、なんてことも思ったんですね。

──確かに。僕もそう思いました。

サトシン だからまずそこを検証しようと思って、公園、保育園、児童センター、図書館とか、子供が集まりそうな場所に出向き、「子供、子供、ちょっとおいで」と呼びながら、こういう遊びだよとお話を引き出そうと思ったんです。でも、ちっちゃい子って必ずお母さんがついてるじゃないですか。僕みたいなドロボーみたいな...あ、そこ、笑うところと違うよ! まあいいや、ドロボーみたいな風貌のおっさんが来ると怪しいヤツって思われて、「ウチの子に何の用ですか!?」って絶対子供の手を離さないんですよ。まあ、当然といえば当然なのかもしれないけれど。

──わかります(笑)。

サトシン そうそう、って失礼な! で、「ちょっと待ってください、別に変なことしませんから。じゃあ一緒に見ててください」ってまずお母さんを説得してね。「おてて絵本」ってこういう遊びで一緒にやってみようよって簡単にやり方を教えてあげてやってみると、みんなホントにおもしろい話をするんですよ。見守っていたお母さんはそんな子供の姿に最初はポカーンとして、終わったら「ケンちゃん、そんな話をする子じゃなかったじゃない!」って驚く。それまで「おてて絵本」みたいな遊びをやってないから子供の能力に気づかないわけですよ。「でもほら、できるじゃないですか」と言うと、「そうですねえ」って。

──へ〜みんなできたんですねえ。

サトシン こんな感じで検証していくうちにわかったんですが、子供はみんな、大人に向かってお話をしたいんですよ。大人に話を聞いてもらいたい。自分よりも体も大きく経験も多い、とてもかないそうもないような存在の大人をですよ、自分の力でおもしろいと思わせたり、自分の話を大人がちゃんと聞いてるという確認を取れるってことが、自分のプライドをくすぐることだったり、純粋にうれしいことだったりね。どの子も、そういう喜びを感じながら、お話をごっこ遊びとして捉え、楽しめるんだな〜と、たくさんの小さいお友だちとのやりとりを通して再確認できたんです。

最初から目標は世界制覇

──もうこれは絶対イケルと?

_0001613.jpgサトシン 子供のする話もレベルはいろいろですが、楽天的でスットコドッコイな話が圧倒的に多くて、本当に聞いてておかしいんですよね。なもんで、これはイケるぞ、と。子供から集めた話をテキスト化して、こういうふうな活動をし始めますとプレスリリースを用意して、新潟県内のいろんなメディアに連絡をとり始めました。

──出た! 得意のプレゼン攻勢!

サトシン そのときね、単に日本の中で広まればいいというのではなく、最初から日本発の文化として世界中に広めようと思ってたんです。「KARAOKE」と言ったら、日本発で今や世界共通語じゃないですか。それみたいに、「OTETE」といったら、世界中のお父さん、お母さんが知っている状況になるといいなと。アメリカのお父さんも、インドのお母さんも、寝る前には「Let's play OTETE!」とかいいながら楽しめるようになるといいよな〜と思ったんです。

──最初の目標が世界制覇ですか。スケールがでかいですね〜。

サトシン 戦略としては、最初から3段ロケットでいこうと。いきなり全国配信のマスメディアで取り上げてもらうのはハードルが高いし、ニュースソースも多いので、どんなにおもしろい話でも埋没してしまう可能性が高い。だからまずは新潟で響かせようと。競合が少ない新潟エリアのメディアに興味をもっていただき、ニュースや記事になれば、それが僕のプレゼンツールになる。これが1段目。

 で、新潟で配信されたものをプレゼンツールとして、東京のテレビ局や新聞社などの全国発信のメディアに声をかけ、広げていただくというのが2段目。

 日本で広まったら、次は世界。これで3段。文化や言語は違っても、人間はみんな手をもち、口をもっている。それさえあれば「おてて絵本」はできる。お金も道具もいらない。だから世界中で喜んでもらえる。っていうふうに最初から考えたんですね。

──なるほど〜。新潟→日本→世界という3段ロケットですね。確かに子供の発想力、子供が親と遊びたがる気持ち、親が子供を思う気持ちには、国境や人種は関係ないですもんね。ロケット、ほんとに飛びそう。

おてて絵本普及協会を勝手に設立

サトシン ほんとに飛ばすんじゃないですかねえ。で、おてて絵本普及活動をやり始めるときに、メディアにとっては僕は何者かもわかんないし、お母さんにあやしいと思われてばっかりってのもマズいので、まずは信頼感を得ることが大事だと思ったんですね。そのためにはそれらしい団体名があるとかっこいいなってんで、「おてて絵本普及協会」というのを勝手に作ったんですよ。構成メンバーは僕一人なんですけど。「協会」ってつくとなんか安心するじゃないですか。

──あ〜その辺の戦略、プランナーっぽいですねえ(笑)。

サトシン それで「おてて絵本普及協会」として「おてて絵本」のプレスリリースを作って、新潟のいろんなメディアに持ってったっていうのが最初だったんですよ。とある局に「おてて絵本」の企画趣旨とか、これまで集めた子供の話をもってたら、「これはおもしろいですねえ、でもこの子の話、リライトしてるでしょ?」って言われて。「あー、おもしろくするために手を加えてると思われてるのか、これは信じてもらえてないな」と思って、じゃちょっと待っててくださいって言って、すぐに家電の量販店に行ってICレコーダーを買って、それを持って近所の公園に行って「おーい、子供、子供」って捕まえて「おてて絵本」をやってもらって録音したんです。

 それを持ってまた局に帰って、録音してきたものを「はい、これ」って聞かせたら、「ああ、ほんとにこれはスゴいことになるかも!」ってやっとこさ信じてくれて、ニュース番組で特集として放送してくれたんです。それでひとつカタチになったら、その後は別の局でも特集してくれたり、記事になったり、ラジオ番組に呼ばれたりと、ドドドドドと露出が増えていったんです。

──最初の一発が決まったのが大きいですね。それをさくっと決めるあたりがさすがです。

サトシン まあ、発射段階はひとまずうまいこといったかなと。で、そろそろロケットの第2段を飛ばそうと、掲載された記事やらニュース映像やらをもって東京に行こうと思ってたら、新潟のNHKが僕の活動をドキュメンタリー番組にしてくれた。それを新潟だけの話ではもったいないとアナウンサーさんが思ってくれて、自分で企画書を書いて社内会議を通し、全国放送の情報番組で流してくれたんです。それを観た全国のマスコミ関係者、テレビ局のディレクターさんとか新聞や雑誌の記者さんとか出版社の編集さんとかが興味をもってくれて、その後はこちらからアクションを起こさなくてもバンバン取材依頼が来るようになったという感じですね。

──すごい! まさに思惑どおりですね。さすがプランナー!

_0001635.jpgサトシン まあ、3段ロケットで〜とか、何となくビジョンをもつところまではちゃんと考えていたんですが、後はなーんにもやってないんです。後は動いているとそれを知った方がどんどん紹介してくれ、一度興味を持ってくれた方が引き続き応援してくれ、そんな動きが徐々に広がって今に至ってるって感じです。

──朝日とか日経とか大手マスコミにも取り上げられてますもんね。

サトシン 新聞では最初に全国発信でズドーン!と大きい記事にしてくれたのが朝日新聞さんでした。他のメディア関連の方も、その記事で僕を知ってくれた方がかなり多いし、皆さん、このときの記事の大きさと内容を見て「これはスゴいことだよ」って言ってくれます。

 現在は講演やワークショップであちこちから呼んでいただいているんですが、呼んでくれる行政とか教育機関の方って、僕関係の記事をスクラップしてくれてて、イベントなどで会ったときには「このときから知ってました」って、よくその記事を見せてくれるんです。新聞記事って、その日に出てはいおしまい、じゃなく、効力をずーっと引きずるんですね。ほんと、ありがたいことだよなあ。取材してくれた記者さんも、それをスクラップしてくれてる皆さんも。

 あと、同じ時期にフジテレビの「めざましテレビ」や多くの子育て系雑誌の皆さんも取材してくれて、さらにそこから取材依頼が激増しました。

 講演、ワークショップは地元新潟だけじゃなく、ホントあちこちからお呼びいただけるようになりました。幼稚園や保育園の保護者会に呼ばれたり、園や小学校の先生の研修会に呼ばれたり、大学や専門学校や図書館に呼ばれたり、生涯学習の一環でお声がかかったり、アイデア発想のヒントとして作家やクリエイター志望の方のための講演で呼ばれたり、まあ様々ですね。

──今、講演って月に何回くらいやってるんですか?

サトシン この1年半で100回以上はやっているでしょう。途中からめんどくさいから数えなくなりました。その中には「おてて絵本普及協会」の支部を作ってくれた団体もあるんですよ。

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たったひとりで勝手に作った「おてて絵本普及協会」は現在、福岡と名古屋で支部が立ち上がっています。それもサトシンさんが設立したのではなく、両方の地元の方が自発的に設立したということです。自分から強く働きかけなくても勝手に応援団が増えていくというのもサトシンさんの強みのひとつでしょう。

次回は支部ができる過程や「おてて絵本」の効能について語っていただき.....たいのですが、最近私の本業が忙しくなりつつありまして、次のリリースまでは時間が空くかもです。生暖かい目で見守りつつ、気長にお付き合いいただければ幸いです。よろしくお願いします。

■といいつつ第6回の前に「緊急うんこインタビュー・前編」へ

第4回はこちら

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 ●サトシンさんプロフィール
サトシン(本名:佐藤伸)1962年新潟県出身。三児の父親。元コピーライター。
広告としての受賞歴:「日本新聞協会 新聞社企画部門 新聞広告賞(新潟日報社)」「新潟広告賞グランプリ(第四銀行)」「新潟広告賞大賞(北陸国道協議会)」ほか。
2006年12月、すずき出版より「おったまげたと ごさくどん」(サトシン/作 たごもりのりこ/絵)を出版し、以降、本格的に作家活動に突入。
2007年4月、「おてて絵本普及協会」設立。新しい親子遊び「おてて絵本」の普及とこどもたちの「おてて絵本」ストーリーの採取・紹介に力を入れている。
2009年12月に出版した「うんこ!」がただいま絶好調増刷中。


●公式サイト→絵本作家サトシンHP
●サトシンさんが立ち上げたおてて絵本普及協会



●絶賛増刷中の


コメント(6)

はじめまして。
おてて絵本、かなり面白いコミュニケーション遊びと思っていたんですが、その普及活動をしているサトシンさん自体がすごく面白い人だったんですね!
飄々としているようで並々ならぬ思いと情熱と行動力を感じます。
インタビューを読みながら元気をいただきました。
サトシンさん、情熱大陸にも似合いそう。
インタビューの内容そのまま番組にでいけちゃいそうです。
続きもすごく気になりますので!
できればお早いリリースを・・・・・・待ってます!

サトシンさんの話、笑い転げてしまいます。面白い方ですねぇ。
仕事が全くないなんて大変な状況だったはずなのに、それを苦労話ではなく笑い話にしてしまう強さというか、たくましさを感じます。
すごいことをやっているのに、すごいと感じさせないのは本当に楽しんでやっているからなのでしょうか。
続きを楽しみに待っています!

>私にとって世の中で一番おもしろいと思えるもの、それは「人」です。
激しく同意!しかしそんな中にあってサトシンさんのおもしろさは突出してますね。
よくぞこんなにおもしろい人を発見したなあと、その慧眼にまず脱帽!
サトシンさん、もう十分一部では有名な方なようですが、まだいわゆる有名人というまでには至ってないような。
そういう人材を見出して最初に話を聴き紹介できる、これもまたインタビュアー冥利?なんてちょっと思いました。
大笑いしながら大きく共感しながら読ませてもらいました。
続きも楽しみです!

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