ツイッターとかmixiとかでも大反響のサトシンさんインタビューのその3をお届けします。
(その2から続く)
奥さんには内緒で収入ゼロに
サトシン そんなこんなで(※詳しくはインタビューその2を参照)広告の仕事を辞めて絵本一筋で動き始めたんですが、ちょっとまずかったのが、これまたカミサンにこういう話を一切しなかったんですよ。
──え〜??? またひとりで決めちゃったんですか? それはまずいっしょ!
サトシン っていうか、そのときはカミサンに何も聞かれなかったから言わなかったってだけなんですけどね。
──いやいや、そんなの言わなきゃわかるわけないじゃないですか!
サトシン そうとも言いますかねえ。でもまあ、パソコンに向かってる分には広告の仕事をやってるのか、絵本の企画を考えてるのかなんて、見た目にはわかんないですよね。まるっきり同じだもん。なもんで、ひたすらパソコンに向かって絵本をカタチにすべく没頭してたんですよ。収入ゼロだし、いつカタチになるかもわからないし、とにかく1日24時間、絵本まみれで、それしか考えなかった。
経済的な不安もあったので、本も買わなくなったし、映画も観なくなった。遊びにも行かなくなったし、晩酌もスッパリやめました。我ながら、こんなに禁欲的で地味な生活アリ?って感じ。なんだけど、やりたいことに向かっていけてるって充実感はバリバリだったので、それを苦とは思わなかったですね、まるっきり。新しいことにチャレンジできるワクワク感はオッサンだって大きいんですよ。いや、オッサンだから一層大きかったのかな。ま、得るべき収入を犠牲にしているのは確なわけで、カミサンや家族には申し訳なく思ってはいましたけどね。
で、半年くらいたったときに、カミサンが休みの日、テレビを観ながら「最近、仕事どーなん?」て聞いてきて。そのとき「あ〜〜、ついにきた〜」と。
──ついにきましたね〜。っていうか、半年後?(笑)
サトシン そうそう。で、「仕事はねえ、やってないよ?」って答えたら、「いや、今やってるじゃん」って言われて。「いや、これ仕事じゃないんだけど」「え? 仕事でしょ?」と。「いや、仕事ではないんだな」「じゃ何やってんの?」「絵本書いてるんだわ」「絵本の仕事でしょ?」「いや、仕事ではないんだな」
と、ここまできたところで、カミサンもこれはただ事じゃないと思ったらしく、「ちょっとこっちきて座って」って、座布団の上に正座させられて。
──うわ〜(笑)
サトシン で、「最初から説明してくれますか?」って言われたから、これこれこういうわけで、オレも40超えたし、やりたいことをやらないとだめだと思うんだよ、だからコピーライターじゃダメなんだよ、わかるでしょ? みたいな話をしたら、かみさんは「わかんない」って言うんですよね。
──わはは(笑)。そりゃそう言うでしょ、普通は。
サトシン で、困っちゃいまして。「ということは今は収入ないの?」って聞くから、「まあ結果的にはないよねえ」と。我が家最大のカミングアウトですわ。
──うわ〜......。奥さん、びっくりしたんでしょうね。
サトシン そりゃまあ、びっくりしたわなあ。元々、ちょっと鈍い人で、頭をコンって叩いても5秒くらい経って「イテ」っていうような人なんですよ。本来、そういう性格だから一緒にやってこれたみたいなことも多分にあると思うんだけど、そのときはびっくりしちゃった。「エーッ!」って。
──で、奥さんにどう言い訳したんですか?
サトシン いやいやいや、ちょっと待ってと。だからオレはこのままいっちゃうと自分に嘘をつきながら生きていくことになるし、それじゃイカンだろ、生き方を変えるんだったら今しかないからやりたいことをやろうと思ったんだよ、わかるでしょ? といっても、カミサンはやっぱりわかんないというんですよ。
サトシン流必殺口説き術
──うわ〜。どうやって丸め込んだんですか?
サトシン ちょっと言いそびれたけど、オレも自分ひとりでやってるつもりはないんだと。君が働いてくれてたり、家のことを守ってくれてたりするからこそ、オレは今、一生懸命やりたいことができてるんだと。まあ君に甘えてるところもあるんだけれども、こうして絵本づくりに打ち込められるのは君のおかげでもあるわけだと。君と結婚してほんとによかったと思ってるし、そんなことを考えると、今、オレひとりで絵本を作ってるわけじゃないんだよ。ね、今作ってる絵本を見せるけれども、これはね、僕と君のふたりの共作なわけだから。ってなことを言うと、そこに響いたみたいで「あ〜」みたいな感じになって。
──さすが口から生まれたサトシンさんですねぇ(笑)。
サトシン ここがチャンスだと思って、「これができるのも、ね、君と一緒にやってるからなわけさ。オレも遊びでやるつもりはないから、ちゃんと計算したら、細々とだったら5年くらいは貯金で家族が生活していけそうな気がするので、その間だけ頑張らせていただきたい。最悪ダメだったら、子供も3人いるし、お爺ちゃんお婆ちゃんもいるし、家長としての責任もあるから、そこですっぱりあきらめて、ちゃんと稼げることをやりますんで、ちょっとだけ目をつむってくれないか」と言ったんですよ。
そしたら「わかった」って。その後は一切何も言わなくなりました。新潟に戻ってきたときもそうだけど、結局カミサン、大事なところでは自分に従ってくれるわけで、そういうところ見てると、「ホントにオレのこと好きなんだな〜、愛のドレイだな〜」なんて思っちゃうわけです。
──前回に引き続き2回目のおオノロケ、ごちそうさまです。でも、「一言私に相談ほしかった」とか言われなかったんですか?
サトシン そりゃ言われましたけど、だってお前、聞かなかったじゃんって言ったら、あ、そっかって。ああ、おバカでよかったと思いましたね。
──かわいい奥さんですね。
サトシン かわいいっていうか...。でも今こんな話をいろんな人にすると、「ああ、それは奥さんはバカを装ってるけどそんなことは絶対にないと。本当はすごくよくできた人で、サトシンさんは仏の手のひらの孫悟空みたいに、奥さんの手のひらの上で遊ばされてるんですよ。ほんとに偉いのは奥さんなんですよ、みたいなことをみんな言うんですよ。「いや、頑張ってるのはオレだろう?」って腑に落ちなかったりするんですけどね。
──でもそれ以来一切口を挟まなくなったんだからよかったじゃないですか。
サトシン いや、逆に何にも言われないのがプレッシャーになったりするんですよ。早めに結果を出さなきゃって思っちゃう。で、そのために、人よりも頑張らなきゃいけないとも思うわけ。でもそれが最近いい結果へとつながってるのかな。だからまあ、すべて結果オーライっす!
■その4に続く
●その2はこちら
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結果オーライというか、すべて戦略的にコトを運んでいるような気もすごくしますが......。
さて、次回その4では40にして新しい道をゆく決意を固めたサトシンさんが、最初の一歩をどのように踏み出したのか、そしていよいよ「おてて絵本」誕生秘話をぶっちゃけていただきます。乞う、ご期待!
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●サトシンさんプロフィール
サトシン(本名:佐藤伸)1962年新潟県出身。三児の父親。元コピーライター。
広告としての受賞歴:「日本新聞協会 新聞社企画部門 新聞広告賞(新潟日報社)」「新潟広告賞グランプリ(第四銀行)」「新潟広告賞大賞(北陸国道協議会)」ほか。
2006年12月、すずき出版より「おったまげたと ごさくどん」(サトシン/作 たごもりのりこ/絵)を出版し、以降、本格的に作家活動に突入。
2007年4月、「おてて絵本普及協会」設立。新しい親子遊び「おてて絵本」の普及とこどもたちの「おてて絵本」ストーリーの採取・紹介に力を入れている。
2009年12月に出版した「うんこ!」がただいま絶好調増刷中。
●公式サイト→絵本作家サトシンHP
●サトシンさんが立ち上げたおてて絵本普及協会
●絶賛増刷中の
(その2から続く)
奥さんには内緒で収入ゼロに
サトシン そんなこんなで(※詳しくはインタビューその2を参照)広告の仕事を辞めて絵本一筋で動き始めたんですが、ちょっとまずかったのが、これまたカミサンにこういう話を一切しなかったんですよ。
──え〜??? またひとりで決めちゃったんですか? それはまずいっしょ!
サトシン っていうか、そのときはカミサンに何も聞かれなかったから言わなかったってだけなんですけどね。
──いやいや、そんなの言わなきゃわかるわけないじゃないですか!
サトシン そうとも言いますかねえ。でもまあ、パソコンに向かってる分には広告の仕事をやってるのか、絵本の企画を考えてるのかなんて、見た目にはわかんないですよね。まるっきり同じだもん。なもんで、ひたすらパソコンに向かって絵本をカタチにすべく没頭してたんですよ。収入ゼロだし、いつカタチになるかもわからないし、とにかく1日24時間、絵本まみれで、それしか考えなかった。
経済的な不安もあったので、本も買わなくなったし、映画も観なくなった。遊びにも行かなくなったし、晩酌もスッパリやめました。我ながら、こんなに禁欲的で地味な生活アリ?って感じ。なんだけど、やりたいことに向かっていけてるって充実感はバリバリだったので、それを苦とは思わなかったですね、まるっきり。新しいことにチャレンジできるワクワク感はオッサンだって大きいんですよ。いや、オッサンだから一層大きかったのかな。ま、得るべき収入を犠牲にしているのは確なわけで、カミサンや家族には申し訳なく思ってはいましたけどね。
で、半年くらいたったときに、カミサンが休みの日、テレビを観ながら「最近、仕事どーなん?」て聞いてきて。そのとき「あ〜〜、ついにきた〜」と。
──ついにきましたね〜。っていうか、半年後?(笑)
サトシン そうそう。で、「仕事はねえ、やってないよ?」って答えたら、「いや、今やってるじゃん」って言われて。「いや、これ仕事じゃないんだけど」「え? 仕事でしょ?」と。「いや、仕事ではないんだな」「じゃ何やってんの?」「絵本書いてるんだわ」「絵本の仕事でしょ?」「いや、仕事ではないんだな」
と、ここまできたところで、カミサンもこれはただ事じゃないと思ったらしく、「ちょっとこっちきて座って」って、座布団の上に正座させられて。
──うわ〜(笑)
サトシン で、「最初から説明してくれますか?」って言われたから、これこれこういうわけで、オレも40超えたし、やりたいことをやらないとだめだと思うんだよ、だからコピーライターじゃダメなんだよ、わかるでしょ? みたいな話をしたら、かみさんは「わかんない」って言うんですよね。
──わはは(笑)。そりゃそう言うでしょ、普通は。
サトシン で、困っちゃいまして。「ということは今は収入ないの?」って聞くから、「まあ結果的にはないよねえ」と。我が家最大のカミングアウトですわ。
──うわ〜......。奥さん、びっくりしたんでしょうね。
サトシン そりゃまあ、びっくりしたわなあ。元々、ちょっと鈍い人で、頭をコンって叩いても5秒くらい経って「イテ」っていうような人なんですよ。本来、そういう性格だから一緒にやってこれたみたいなことも多分にあると思うんだけど、そのときはびっくりしちゃった。「エーッ!」って。
──で、奥さんにどう言い訳したんですか?
サトシン いやいやいや、ちょっと待ってと。だからオレはこのままいっちゃうと自分に嘘をつきながら生きていくことになるし、それじゃイカンだろ、生き方を変えるんだったら今しかないからやりたいことをやろうと思ったんだよ、わかるでしょ? といっても、カミサンはやっぱりわかんないというんですよ。
サトシン流必殺口説き術
──うわ〜。どうやって丸め込んだんですか?
サトシン ちょっと言いそびれたけど、オレも自分ひとりでやってるつもりはないんだと。君が働いてくれてたり、家のことを守ってくれてたりするからこそ、オレは今、一生懸命やりたいことができてるんだと。まあ君に甘えてるところもあるんだけれども、こうして絵本づくりに打ち込められるのは君のおかげでもあるわけだと。君と結婚してほんとによかったと思ってるし、そんなことを考えると、今、オレひとりで絵本を作ってるわけじゃないんだよ。ね、今作ってる絵本を見せるけれども、これはね、僕と君のふたりの共作なわけだから。ってなことを言うと、そこに響いたみたいで「あ〜」みたいな感じになって。
──さすが口から生まれたサトシンさんですねぇ(笑)。
サトシン ここがチャンスだと思って、「これができるのも、ね、君と一緒にやってるからなわけさ。オレも遊びでやるつもりはないから、ちゃんと計算したら、細々とだったら5年くらいは貯金で家族が生活していけそうな気がするので、その間だけ頑張らせていただきたい。最悪ダメだったら、子供も3人いるし、お爺ちゃんお婆ちゃんもいるし、家長としての責任もあるから、そこですっぱりあきらめて、ちゃんと稼げることをやりますんで、ちょっとだけ目をつむってくれないか」と言ったんですよ。
そしたら「わかった」って。その後は一切何も言わなくなりました。新潟に戻ってきたときもそうだけど、結局カミサン、大事なところでは自分に従ってくれるわけで、そういうところ見てると、「ホントにオレのこと好きなんだな〜、愛のドレイだな〜」なんて思っちゃうわけです。
──前回に引き続き2回目のおオノロケ、ごちそうさまです。でも、「一言私に相談ほしかった」とか言われなかったんですか?
サトシン そりゃ言われましたけど、だってお前、聞かなかったじゃんって言ったら、あ、そっかって。ああ、おバカでよかったと思いましたね。
──かわいい奥さんですね。
サトシン かわいいっていうか...。でも今こんな話をいろんな人にすると、「ああ、それは奥さんはバカを装ってるけどそんなことは絶対にないと。本当はすごくよくできた人で、サトシンさんは仏の手のひらの孫悟空みたいに、奥さんの手のひらの上で遊ばされてるんですよ。ほんとに偉いのは奥さんなんですよ、みたいなことをみんな言うんですよ。「いや、頑張ってるのはオレだろう?」って腑に落ちなかったりするんですけどね。
──でもそれ以来一切口を挟まなくなったんだからよかったじゃないですか。
サトシン いや、逆に何にも言われないのがプレッシャーになったりするんですよ。早めに結果を出さなきゃって思っちゃう。で、そのために、人よりも頑張らなきゃいけないとも思うわけ。でもそれが最近いい結果へとつながってるのかな。だからまあ、すべて結果オーライっす!
■その4に続く
●その2はこちら
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結果オーライというか、すべて戦略的にコトを運んでいるような気もすごくしますが......。
さて、次回その4では40にして新しい道をゆく決意を固めたサトシンさんが、最初の一歩をどのように踏み出したのか、そしていよいよ「おてて絵本」誕生秘話をぶっちゃけていただきます。乞う、ご期待!
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●サトシンさんプロフィール
サトシン(本名:佐藤伸)1962年新潟県出身。三児の父親。元コピーライター。
広告としての受賞歴:「日本新聞協会 新聞社企画部門 新聞広告賞(新潟日報社)」「新潟広告賞グランプリ(第四銀行)」「新潟広告賞大賞(北陸国道協議会)」ほか。
2006年12月、すずき出版より「おったまげたと ごさくどん」(サトシン/作 たごもりのりこ/絵)を出版し、以降、本格的に作家活動に突入。
2007年4月、「おてて絵本普及協会」設立。新しい親子遊び「おてて絵本」の普及とこどもたちの「おてて絵本」ストーリーの採取・紹介に力を入れている。
2009年12月に出版した「うんこ!」がただいま絶好調増刷中。
●公式サイト→絵本作家サトシンHP
●サトシンさんが立ち上げたおてて絵本普及協会
●絶賛増刷中の
私ずーっと「奥さん偉いなぁ」と思っていたんですが、何ゆえ文句も言わずサトシンさんに付いて行ってるかが、このインタビューを読んで、漸く腑に落ちました。
世の中の男は皆、口から生まれたらいいのに!
>姐御さん
奥さんはほんとにエライと思います。
俺も口から先に生まれたかったっす……。