一筆入魂

フリーライター/編集者 山下久猛のブログ

2020
04/29
仕事人インタビュー

【新型コロナウイルス影響インタビュー】「最近どうよ?」第1回週刊誌カメラマンの場合

新型コロナウイルス(以下、新コロ)の流行以来、徐々に進行中の仕事が延期になったり停止したり、発注そのものも減少。3月中旬頃にはやることがない完全中年ニート状態になった。最初は録り貯めた番組を観たり、amazonプライムビデオで昔好きだったSPECシリーズを一気観したり、昼酒したり昼寝したりとニート生活を満喫していたが、そういう生活も2週間くらい続くとさすがに飽きてくる。

と同時に危機感も強くなる。このままグータラニート生活が長くなると、仕事のモチベーションを保つのは難しい。新コロが終息しても以前のように仕事をする気が失せてしまうのではないか、取材して書くという感覚が鈍りまくるのではないか、社会復帰できなくなるのでは。あと技術的にも長らく取材・テープ起こし・執筆をしてないと錆びついてしまうんじゃないか。とはいえ企業や出版社が活動を縮小もしくは停止していたり、取材対象者が取材NGを出すケースも多々あるので、自分としてはどうしようもない。でもこのままでは生きる屍。

そんな無限ループを繰り返す中で、じゃあ仕事としてできなければ自主練すればいいじゃない。つーことでリハビリも兼ねて、自分の親しい友人に仕事や生活についての近況を趣味でインタビューして記事として書こうと思い立ったわけであります。

その第1弾として、学生時代から約30年くらいの付き合いになる大親友の某週刊誌のカメラマンに話を聞きました。やはり雑誌業界にもかなり新コロの影響が出ているようです。

★取材対象者プロフィール
50代の週刊誌カメラマン。妻と3人の子どもの5人家族

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取材が激減、媒体の存続自体にも危機感

──最近、仕事どーすか?

いやー大変だよ。取材がかなり減ったからね。

──出勤はしてるの?

非常事態宣言が出てからは、会社としては出社してなくていい、テレワークでいいとなった。でも雑誌はそうはいかないじゃん。特にカメラマンは現場に行かなきゃいけないから出社してるか取材に出てる。だけど、会見やイベントが激減したし、普通の対談やインタビューものなど人に会う取材がなくなった。例えばタレントがお気に入りの飲食店にごはん食べに行くという連載企画をやってたんだけど、自粛要請が出てからはタレントが外出したくないというのと、飲食店も休業して閉まってるから、連載自体が立ち行かなくなっちゃった。だから社内にいることが増えたよ。カメラマンなのに(苦笑)

──記者はどうしてんの?

基本電話取材だね。

──社内にいる時は何してんの?

待機だね。

──でも撮影指令が全然出ないってことはないんでしょ?

うん。例えばパチンコ屋で行列できてるから撮ってこいとか、まあ何かしらはあるんだけどね。

──でもそういうしょうもない撮影しかない(笑)。

そう。あるとしても新コロ関係の取材ばかりだね。例えば、この前はある地方の企業に行ったよ。

取材先でバイ菌扱いされる

──そういう案件は現場に行って撮影できるからいいじゃん。

そうだねー。でもこの時、東京から来たと言ったら取材先でバイ菌扱いされたよ(笑)。

──まじで? 取材はあんまりできなかったの?

できたんだけど、取材先でいちいち言われてさ。自分が悪いんだけど取材先の担当者に挨拶する時、失礼かと思ってマスクを外したのね。でも社内では社員の人はみんなマスクしてるから、担当者の人に「僕もマスクした方がいいですよね?」って聞いたら「大丈夫ですよ」と言うから、そのままマスクしないで取材対象者の人に会ったのよ。そしたら「マスクしないんですか?」って言われちゃって(笑)。あと「東京ってもう新コロの感染者数が3000人、死亡者数も100人超えてるんですよね」とかいちいち言うわけ。やっぱり地方の人はすごい気にしてるし、都会を見る目がシビアかもしんないと思った。

──特に東京なんて全国でダントツに多いから当然だよね。しかしそれは地域間の分断がうかがえる話だね。

そうでしょ。分断を実感したよ(笑)。

──あと最近の仕事で印象に残ってることは?

ちょっと前に温泉取材をやったのよ。来年掲載用の写真を撮影しに、旅館に行ったのね。そしたら当然だけど宿泊客なんて誰もいない。旅館も青ざめてて、「すいません、今日撮影した写真、掲載は来年になるですけど」って言ったら「うち来年あるかどうかわかんないですよ」ってけっこう深刻でさ。さらには「来年の仕事が今できるなんて、あなたの会社はいいですね」って。1年後のことなんて全然見えてない。相当危機感もってると思ったよ。

──その旅館の人の気持、めちゃわかるわ?。取材自体もやりにくくなってる?

すごくなってる。僕に限らず同業者はみんなそう感じてると思うよ。だからもうこれから取材自体どんどん減っていくと思うし、出張取材は無理だね。ちなみに新幹線も飛行機もガラガラで貸し切り状態だったよ。うちは何でもやるからまだいいんだけど、完全出来高制の、特に女性誌とか芸能誌のフリーのカメラマンはきついと思うよ。ライブも会見もなくて何にも撮れないからギャラが一銭も入ってこないからね。僕の知り合いのカメラマンも収入が止まって、これが続くと本当に生活できない、ヤバいって言ってた。これで緊急事態宣言が延長になるとどうなるか。廃業する人がいっぱい出てくるんじゃないかな。

──そのカメラマンの気持ちもめっちゃよくわかる。まさに僕と同じ状況だから。

山ちゃんも何とかして生き延びてください(笑)。

──それ考えると年俸制のカメラマンでよかったね。

そうだね。毎月安定的に給料入るからね。でもうちの雑誌も全然安泰じゃないんだよ。駅売りがメインなんだけど、今、駅に人がいないから売れないから。

──紀伊國屋書店も新コロの影響で4月中旬から臨時休業中だしね。

そうそう。大型書店も閉まってるから、雑誌はコンビニでしか買えない。ヤバいんだよ。だからこのまま自粛が続いて雑誌が売れなくなると、人員削減ならまだいいけど雑誌がなくなる可能性もあるからね。来年はどうなってるかわからない。先が見えない不安感はあるよ。

──とはいえ、今やる仕事があるだけでうらやましいっすよ。

でもさ、こないだ新コロで中止になってる某展覧会がマスコミ向けに内覧会だけやったのね。その撮影に行ったんだけど、結局再開できなくて中止が決まった。でもせっかく貴重な展示物の写真を撮ったから、幻の展覧会としてページを作ったの。もうそうでもしないとネタがなくて誌面が埋まらないんだよ。このまま緊急事態宣言が解除されなければ、僕もすることなくなっちゃうかも。

──毎日出勤してて、減ってはいるけど取材で外に出て人に会ってるじゃん。新コロに感染するんじゃないか、みたいな恐怖感てある?

あるある。けっこうあちこち取材で出掛けてるから感染してんじゃないかなとは思う。カメラマンは現場に行ってなんぼだからね。現場に行かなきゃ雰囲気もつかめないもんね。

──それはおれらライターも同じだね。

恐かったのが、新コロ騒ぎのだいぶ初期の頃なんだけど、感染者が発生した現場に何回か行ってるのよ。3月の頭くらいにNTTデータの職員が感染したってニュースが流れたじゃん。その人は千葉に住んでて高輪の会社まで電車通勤してたり、名古屋に新幹線で出張してたりしてけっこう騒ぎになったよね。そのNTTデータのビルの写真を撮りに行ったわけ。行くといろいろわかるんだけど、周りに飲食店やコンビニがたくさんあるのね。そこに感染した社員が通ってたんだなと思うと、この辺一帯の人たちに教えてあげたくなったんだけど立場上言えないじゃん。そういう現場で写真撮ったりすると恐くてさ。コンビニで買い物さえできないっていう感じだった。

それからコロナの発生源になった銀座のクラブにも何軒か取材したんだけど、最大限に注意したね。自分はいいけど気をつけないと家族に感染させちゃうから。でももう抗体できてるとも思うんだけどね。訪問看護してる奥さんも子どもも3人とも元気だから、うちの一家全員抗体できるんじゃないかと(笑)。

──でも新コロ、恐いよね。こないだの埼玉県の50代の男性が新コロに感染して自宅待機中に死亡したというニュースはショックだったな。ほんと他人事じゃない。感染しても4日間待機してろってのは何だったんだっていう。

そうそう。感染してすぐ亡くなる人もいるじゃん。志村けんさんの死はショックだったな。岡江久美子さんもそうだしさ。いつ死ぬかわかんないからね。どういう病気かもまだわかんない点がたくさんあるから。

──治療法も確立されてないしね。

そうそう。死ぬつもりはないけど危ないよね。山ちゃんも熱が出たら即病院ね。

──でもそうしても家にいてくれって言われるだけだからねえ。

そうなったらうちの奥さんにオンラインナースコールを(笑)。何かあったら相談して。骨は拾うから。でもコロナだったら焼き場で骨も拾えないらしいからね。お互い、気をつけましょう。


子どもたちもかわいそう

──私生活の方はどうすか?

今年のゴールデンウィークは珍しくカレンダー通りに休みだから子どもと遊べるなと思ってたんだけど、こうなっちゃうとどこにも行けないよね。キャンプに行こうと思ってたけど、今閉鎖してるし営業してても客が殺到してて感染リスクも上がるし迷惑かけるだろうからやめようと。

──どうすんの?

だから巣ごもり。子どもと一緒に家の中でアマプラを観まくろうかなと(笑)。あとは家の周りで遊んだりするくらいかな。公園は土日はけっこう人いるからあんまりよくないよね。

──子どもはどうしてんの? 学校は休みだよね。オンライン授業とかは?

公立だからそんなのはないね。初日、始業式だけあって復習の宿題が出て、5月の頭の登校日までにやってこいと。3人とも公文に通わせてるけど閉まってるから行けない。でも課題がほしい人は差し上げますというからもらって子どもたちに徐々にやらせてる。遊んでばっかだと勉強する感覚がなくなるからね。子どもらには僕ら両親みたいなアホな大人になってほしくないから(笑)。ちゃんと大学に行って立派な社会人になってほしい。

──いつまでも学校休みってきついよね。

最初の頃、子どもたちは「コロナ休みだ、やったー!」って喜んでたけど、もういい加減飽きちゃって。特に中2の長男は野球部に入ってて、新コロがなければ部活をバリバリ頑張ってるはずなんだけど、今全く野球がやれてないからかわいそうだよね。

──今体を動かしたい盛りだもんね。

子どもも運動不足でさ。こないだ3人とジョギングに行って張り切って走ったんだけど、下の2人(小6と小4)はすぐ筋肉痛になってリタイヤしちゃってさ。早く外で思いっきり遊べるようになってほしいよ。


気になるのは安倍さんより小池さんの動き

──新コロ騒動が起こってからの安倍政権の一連の対応に関してはどすか?

安倍さん、一生懸命やってんだろうけど全部空回りしてる感じだよね。でも世界的な未曾有の危機でものすごい大変だろうから、そんなに批判的でもないかな。それよりむしろ小池都知事の動きが気になる。

──どういうこと?

岸田さんが失言でコケたり、石破さんも出馬する感じじゃなくなったりとか、今ポスト安倍と言われていた人たちが総崩れになっちゃってる。今の自民党の最大派閥は二階派なのね。そのトップの二階さんと小池さんはいまだに仲がいい。だからもし安倍ちゃんがコケて次の総理候補がいない場合、二階さんが小池さんを神輿に担いで総裁選に参加、そして日本初の女性総理誕生という線もありうる。だから小池さんが今、鼻息荒くして一生懸命新コロ対策に立ち向かってる姿をアピールしているのはそのシナリオのためかなという見方もできるわけ。

──小池さん、ついに野望に向けて動き出したかと。

そうそう。これがラストチャンスと見てね。今、新コロでみんな大変なのにその裏で密かにそういう政治的な企みのために動いてんのかなと思ったりして。

──小池さん、一連の動きは7月の都知事のためだと思ってたけど、確かに日本初の女性総理を狙ってる可能性もあるという見方はおもしろいっすね。あざーした!


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前半zoom、後半LINEで呑みながらインタビューしたんですが、どっちも想像以上にストレスなく話ができました。彼と話すこと自体、久々だったということもありますが、オンライン呑み、酒が進みすぎて困りますな。

でも趣味聞き書きとはいえ、手先を動かし、ここのところほとんど使わなかった仕事脳を使うことで気分もリフレッシュできたし、聞き書きの楽しさを再確認できたので、やっぱやってよかったなと思いました。

今後も協力してくれる人がいる限り続けたいと思います。ろしくお願いします。

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