一筆入魂

フリーライター/編集者 山下久猛のブログ

2019
03/25
日記

イチローの引退会見を観て感じたこと

イチローの引退会見をライブで観た。ちゃくちゃおもろくて胸熱。ひと言ひと言が深くて重い。野球好きでもイチローファンでもないけど、いつまででも観てられる......。後日、改めてイチローの引退会見動画から全文文字起こししようと思ったけど、案の定すでにやってくれているサイトがあって助かりました。

ichiro.png


胸に響く言葉がたくさんあったのだが、中でも最もぐわんぐわん響いたのが、「野球を楽しいと感じた瞬間はあったか?」という質問に対して、「ない。やりがいがあって達成感や満足感を味わうことはたくさんあったけど、純粋に楽しいと感じたことはない。楽しいというとは違う」という回答。

この言葉に、イチローのプロ意識が集約されていると思った。よく「仕事が楽しい」とか「仕事は楽しんでやるのが一番」なんていう言説を聞くけど、こんなことを言ってるうちはまだまだプロとはいえない。アマチュアだ。仕事なんだから楽しいだけなわけがない。つらく、苦しいことも多いはずだ。楽しいだけならそれは単なる趣味だ。
とはいえ、もちろん嫌いで嫌々やっているわけでもない。その仕事が好きで、自分でやりたいと選んで、使命感なりやりがい、やる意義を感じているからつらく、苦しくてもやるわけだ。
「好き」「やりたい」と「つらい」「苦しい」は一見、矛盾、相反するように見えるが、同居できる。結果も出せる。この辺はわかる人にはわかるしわからない人にはわからないだろう。

と同時に、イチローはなんてメンタルの強い人なんだと改めて感服いたした。「楽しい」と感じられない仕事を重いプレッシャーを背負って25年間も続け、前人未到の結果を残すとは超人としか言えない。マジ苦行僧か。

あともう1つは、「自分の限界を見ながらちょっと超えていくことを繰り返していく。そうすると、いつの間にかこんな自分になっているんだという状態になる。一気に高みに行こうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、続けられない」という言葉。
これは前にも書いたと思うが、人が成長するには負荷をかける必要があるんだけど、その負荷はその時点でその人が少し無理して頑張れば耐えられるくらいのものに設定するべき。目標という言葉に置き換えれば、その時のその人の限界ラインよりも少し上に設定する。普段よりも無理して頑張れば達成しうる目標にする。一方、負荷、目標が大きすぎると潰れてしまう。俺もこれまで、当時の俺の実力では到底無理な仕事を与えられて潰れそうになったことが何度かあるのでものすごくよくわかる。
このさじ加減はすごく難しいと思うが、うまく繰り返すことで、成長していける。ひと皮むけるというやつだ。

直接指導してくれたり、成長する機会を与えてくれる上司や先輩のいないフリーでも、似たような仕事、得意な仕事、難なくこなせる仕事ばかりやっていては成長できない。新しい自分にはなれない。だから「ちょっと難しいかも」「本当に自分にできるだろうか」と不安に思うくらいの仕事をやり遂げることが大事だ。振り返ると、あの仕事の依頼が来た時、不安を感じて迷ったけど、請けて最後までやり通したことでまた新しいスキルが身についた、少しだけど成長できたと思う経験がいくつかある。

ここでもイチロー恐るべしと思ったのは、これをイチローはずっと自分でやり続けてきたということだ。自分の限界よりちょっと上、ちょうどいいレベルの負荷や目標を上司に与えられるのではなく、自分で設定して自分に課し、自分で達成する。これをまた30年近く繰り返し、成長し続けてきた。常人ではない。

3つ目は「人より頑張ってきたなんてとても言えない」。
いやいやあんたより頑張った人がいたら教えてほしいわ! と思わず突っ込んでしまった。どんだけ謙虚やねん! いや、謙虚というのとはまた違うか。

まだまだすげえと思った発言は多々あるけどキリがないからこの辺で。

会見そのものに関しては、インタビュアーとして見て、恐るべきインタビューイだとも思った。一瞬たりとも気を抜けない。的外れなことを聞いたり、同じ質問を繰り返すとハネられる。野暮な質問には毅然として答えない。真剣に向き合っていないと「聞いてる?」と突っ込まれる。完全に主導権はイチローにあった。聞くことを生業にしている身として、これほどMPを削られる取材対象者もいないだろうなと緊張感をもって見てた。

そういえばイチローで思い出したことがあった。俺は野球ファンでもイチローファンでもないので(むしろ最近のイチローの言うことや受け答えはあんまり好きじゃなかった)ので、試合は見ないけど、イチローの仕事ぶりは尊敬していたし、人間性には興味があったので「プロフェッショナル仕事の流儀」的な番組に出演した時やイチローに関する記事なんかは見たり読んだりしていた。その中で、「イチローと同じことはできないが、同じ考え方で行動することはできる」みたいなことを読んだ記憶がある。確かにイチローみたいな偉業はイチローだから達成できるというのは真実なんだけど、それを言っちゃあおしまいで思考停止。イチローも自分も同じ人間、イチローにできて自分にできないはずがない! なんてことはとても思えないけど、その考え方を学んで、自分なりに実践することは不可能ではないよなと。そしたら少しでも今の自分より大きくなれるかもしれない。

とにかくイチローの働き様、生き様に感服すると同時に、自分の仕事に対する姿勢も改めて振り返ることができ、今後の仕事にたぶん生きることがあったような気がするのでよかった。

しかしこの全文改めて読んでイチローはマジすげえ、マジパネェ、このひと言に尽きると思いました。






コメントする

このサイトを検索

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

最近のコメント

最近のトラックバック

RSSフィード

ご連絡はこちら

このサイトに関するお問い合わせや、インタビュー・執筆・編集のご依頼は

 

takezo@interviewer69.com

 

までお気軽にご連絡ください。